十年越しの手話

なぜか、放置していたのに けっこうアクセスがある。

 

 

 

誰にでも尊敬する人はいるだろう。

当然、自分にもいる。

23歳から、働きながら通信制の大学で学んだ。

 

夏休みには、通信生に向けて2週間のスクーリングが開講される。


2週間、夏の京都に泊まる。

友達と、飲んで・飲んで・飲んで・・・・

 

昼飯でお好み焼きを食べながらビールを飲んで、昼からの講義に出る。

永遠と飲んでいる2週間。


ふと、教室で隣に座った女性がいた。


隣の女性が手をヒラヒラさせている。

「何してんだ この人?」

 

ジッと見ていると目が合った。

「それ何やってんの?」

 

隣の女性が答える

「これは手話です。」


「へえ!じゃあ、この人、耳が聴こえないんだ?」


ニコっとする当事者の女性

Sさん

 

新潟から来ていた。

隣の女性は大学が用意した手話サービスの方だった。

 

一気に仲良くなった。

 

Sさんは、校内ですれ違う度に満面の笑みで両手を上下させていた。

 

面白い動きだな。と思いながら手を振り返していた。

 

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「Sさん。飲みに行こうぜ。」


講義が終わった蒸し暑い夕方、飲みに誘った。

ビックリしていた。

 

付き人を通じて断られた。


「私は、話しができないから。。」

 

「大丈夫だよ。あんたも来ればいんだよ。」

 

「え?私も?」

 

付き人がビックリしていた。

 

「当たり前だろ。あんたがいないと俺も困るだろ。」


こんな調子である。

 

奇妙な3人の飲み会が始まった。

 

周りの目も奇異なものを見るようなものだった。

 

それが無性に悲しく、腹も立った。

 


「耳が聴こえなくて、嫌だったこととかないの?」

 

「無いですね。聞きたくない事を聞かなくて良いから、丁度良い。」


ニコっと笑うSさん。

色々と話したが、今でも忘れられない経験だ。

 

帰り、バス停まで送った。

バスの中から、こちらに向けて、また両手を動かしていた。

 

その動きの意味を聞けずじまいで夏は終わり、別れた。


10月の卒業が見えてきた平成23年3月14日

 

 

心配して送ったメールに返信が届いた。

 

「姉は、先日の地震で亡くなりました。」

 

続けて記してあった。


「京都で飲みに行ったことを、いつも楽しそうに話していました。

余程、嬉しかったのでしょう。」

 

と。

 

別れは、いつでも切なく寂しい。


時が流れた。

 

手話のできる人を尊敬している。


一冊の本を読んだ。

 

デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士 (文春文庫)

デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士 (文春文庫)

  • 作者:丸山 正樹
  • 発売日: 2015/08/04
  • メディア: 文庫
 

 

一文にハッとした

 

「両肘を張り、両こぶしを上下に動かした(=頑張って)」

 

そうだったのか。


Sさんは、「頑張って」と言ってくれていたのか。


やっと意味が分かった。

 

Sさんが使っていたのが、日本手話なのか、日本語対応手話なのかは分からない。


そんな事は問題ではない。

 

手話ができるということは素晴らしい。

 

 

 

 

 

 

【今日の格言とツッコミ】

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◇格言

 

最も重要な決定とは、何をするかではなく、何をしないかを決めることだ。

 

ティーブジョブス

 

 

◆ツッコミ

・俺は、もう他人のイメージの奴隷にはならないよ。